1999年

ピアノの先生の家で

1999年3月6日(土)

朝、知らないサラリーマンに声をかけられる。
1日か2日おきくらいに、もう5回くらいになる。

「毎朝お見かけしているだけなんですが、付き合っている方とかいらっしゃるんですか?」

「こんどゆっくりお話していただけると嬉しいんですが」

などと遠慮がちに言う。

歩いているのは私だけじゃないのに、すごい度胸だと思う。
私はいつも、「急いでますから(ほんとうだ)」とか「忙しいですから」などと言って足早に去る。
少し気分がいいが、もともと私は、知らない人なんて恐くて恐くて、とても話す気など起きないのだ。

ちらっと見たところ外見がそれほど悪いわけでもなく、態度もそう失礼ではないが、こちらの様子を伺うような目が少し嫌だな、と思う。
気弱そうな半公務員(名刺を挿し出され、もらっておいた)だ。

どうせ私のことを、大人しそうとか優しそうとか、思ったのだ。
よくあることだ。
私は外見の幼さのせいか、男性に甘ったるい幻想を抱かれやすい。

だけど、よく知りもしない人に、こう何度も声をかけるなんて、私にはとても出来ないことだ。
いや、私にそれほどスキがあるっていうことなんだろうか。
考えているうちに、何だか少し情けなくなってくる。
人恋しそうなオーラが出ているのかもしれない。

1999年4月4日(日)

半月ほど前、残業帰りで疲れて家に向かう上り坂の途中、前方から何となく見覚えのある車が走ってきて、私の少し後ろで止った。

薄暗いので良く分からなかったが、まさかと思って見ていると、男の人が急いで車を降りた。

朝、このところ2日に一度は私を待ち伏せしているサラリーマンだ。

私はすぐさま走り出し、横道に入った。
靴音をなるべく立てないように走った。
逃げだしたことを出来れば気づかれたくなかった。
直線にならないようにしばらく走り、追いかけてこないのを確認すると、ようやくホッとして歩き出した。

恐かった。
朝の待ち伏せだったら電車に乗ってしまえばこっちのものだが、帰りについて来られたら私の家が分かってしまうではないか。
何された訳でもないし、かわいそうだけど、所詮知らない人だし、家が知れるのは困る。

次の日の朝、車はいつもの所にとまっていなかった。
安心して駅に向かって歩いていると、道路の反対側の歩道に、その人が立っていた。
白っぽい薄手のコートを着て、こちらを向いていた。

渡ってくる様子もなく、早足に通り過ぎる私を上目遣いにじっと見ていた。

1999年9月14日(火)

今はそんなふうに怒るか分からないけれど、私は、道端の野良猫を面白半分におどかす人が許せなかった。
その人が知らない人だと怒りを飲み込んだけれど、親しい人だったりすると、泣いてくってかかった。
軽い気持の「ふざけ」と、野良猫の本気の「恐怖」は、つりあわない。

そこにいる猫をからかうか、からかわないかは、その人にとってはどっちでもいい事だと思う。

でも猫にとっては、天と地ほどに精神状態を左右する一大事なんだ!

と思うと、理不尽さに涙が出た。

いじめって、そういうのと同じような部分がある気がしてた。

でも、臆病な私は、学校でいじめを見過ごした経験がある。
思わず声が出たこともあったけど、遠巻きに見ていた事の方が多い。
いじめを見て嫌な気分になるだけで、「絶対に止めさせなくちゃ!」と思っていた訳じゃない。
いじめられてるのが人間だから、本人にも思惑があるだろうと、何となく思っていたかもしれない。

所詮、他人ごとだった。

絶対に人をいじめたことなんてないと思っていたけれど、誰かが、私に「いじめられた」と思ったことがあるかもしれない。

と思いました。

1999年10月1日(金)

バイト先で私を「くん」づけで呼ぶ医者がいる。最初ビックリした。
帰り際、バイト先で他の秘書さんと話してて、ちょっとハラ立つことがありました!
細かいことでしたけど、仕事のことで。
おなかの中が渦巻いてる状態で電車に乗り、どう気分転換するか考えた。

んで結局とりあえず「食欲を満たす」ことに決め、セルフサービスの店でチキンドリアとカプチーノを頼み、どかっとイスに座りました。

そしてメモ用紙とペンを取り出し、現在の自分にとってイチバン大事なことを整理。

実際書きながら考えてみると、結論は

「ムリない程度に一生懸命仕事をする。その他もろもろは今は考えない、欲張らない、聞き流す!」

という、非常にオーソドックスなものになりました・・・

でもスッキリして、グリーンサラダを追加してしまった。

大学病院で秘書のパートをしている頃です。

ある先輩秘書から酷く嫌がらせを受けました。

1999年10月30日(土)

アルバイト環境の危機!
今度新たに2人も秘書を募集しているようなのです。
学会をいろいろ控えてるので、担当を分けたいみたい。
(私はもう既に来年2月のパシフィコ横浜での学会準備を担当してる)
仕事する部屋を独り占めできなくなる可能性が・・・(T-T)

教授と二人or一人きりで働けることだけがメリットだったのに~!

教授の留守中、一人で教授室に閉じこもって窓際でレントゲンを陽にかざしつつ、注意深く判別してスライドや写真を整理している時なんかは、至福の時間です。

今後の計画:
「教授と二人か一人きりで仕事するためにバイトを選んだ」
と今まで以上にアピールする

1999年11月10日(水)

ボーッとして自己主張が無くて、真面目に勉強して、みんなとそれとなく歩調を合わせて過ごしてきた学生時代の私は、いじめられた経験がありません。
小さいのでマスコット的な存在でした。
フツーに人に受け入れられようとしてたし。
一人で決めちゃう態度もとったことないし。
協調性の権化みたいでした。全部無意識ですけど。

ここ数年で知ったんですけど、一人で決めて行動しようとすると、人付き合いのワザが備わってないと反感買い易いのですね。
特に同性には。

ちょっとでもヌケてるとこがあろうものなら、昔は「可愛い」で許されるところでも攻撃の対象になることを知りました。アタリマエか。

しかし・・・
偶然聞にした私に関する悪口(ゆっくり喋る口調までマネて!)の、実際の私の言い方とのニュアンスの違いには、ただただ驚くばかりなのでありました。
すごい伝達能力だ・・・。

1999年11月13日(土)

自分の仕事がひと段落した時に、忙しそうな彼女に

「私今少し時間ありますから何か手伝うことありますか?」

って言ったら、ウレシイわ~って言っていた。

でも仕事は手伝うけど、言葉はもう何にも素直に受け取れません。

だけど「あんな奴!」ってまるきり排除するほど私って強くないのね。
(この欲求不満女!って思ってるけど)
やっぱり気持を訴えてしまいました。
悪口を言った本人と二人で会話できるチャンスであるランチタイムが、仕事の忙しさで潰れてしまい、直訴する機会を失ってしまったので、帰り際に白紙に手紙を簡単にバーっと書き、これ読んで貰えますか、って渡して帰りました。

内容は、悪口を偶然聞いたこと、私がその人を困らせるつもりは全然ないこと、何か私が困ることをしたのなら私に直接教えて欲しいということ。
それと私の知らないところで言われていると思うと仕事がやり辛いし、悪いところも直せないっていうこと。

渡したからってどうにもならないかも。
それどころかますます陰口がひどくなるかも!

まあちょっとスッキリしました。

1999年11月13日(土)

自分はやっぱり変なのだろうか、って思い出すと止まらない!
なんだかバイト先の人ことをずっと考えてしまう。
「どういう心理なんだろう?」とか、「なにがガマンできないんだろう?」とか。

イヤだイヤだ、私にとって全然大切じゃない人のことをずっと考えるのはイヤだよう。
・・・と別のことをムリヤリ考えてみたりする。

でも以前は、イヤだとすら思わなかったです。
何かを考えてる自分、を客観的に見ることが全く無かったのです。

1999年11月15日(月)

今日、彼女あての電話を私が受けてすぐ彼女を呼びに行ったんだけど、「は~い」って返事したのに電話に出ていないことに気づいた!
知っててわざわざ別の電話にすすんで出ているのだ!

保留のままなのを見つけて「ええ~?まさか…」と思い、慌てて私がとったらもう切れていたぞ。
顔見知りのお医者さんなのに!

なんて性格の悪いやつなんだああ~!! 

1999年11月29日(月)

毎朝ベッドで、気合を入れる瞬間があるんです。
その時、「あっ ダメだ!」と思ったら、もうその日は絶対にダメ。

大学にお休みの連絡をしてしまった。
あー 胃がイタイ。
サボったということに対してイタイのだ。バカバカしいぞ!

でもこれはきっともう少し寝ると治るのです。
寝なおして、楽しい休日を過ごそう。